THE SLIGHT EDGE
第1部 スライト・エッジの作用
第5章 急がは回れ
努力を積み重ねるということが持つ力
ジム・コリンズの名著『ビジョナリー・カンパニー2:飛躍の法則』(山岡洋一訳、日経BP杜)の中に、 スライト・エッジは往々にして脱出速度に達するまでは目に見えず、たとえ見えても取るに足りないように思えることを見事に描いた一節がある。
巨大で重い弾み車を思い浮かべてみよう。
金属製の巨大な輪であり、水平に取り付けられていて中心には軸がある。
直径は10メートルほど、厚さは60センチほど、重さは2トンほどある。
この弾み車をできるだけ速く、できるだけ長期にわたって回しつづけるのが自分の仕事だと考えてみる。
必死になって押すと、弾み車が何センチか動く。
動いているのかどうか、分からないほどゆっく りした回転だ。
それでも押し続けると、2時聞か3時間がたって、ようやく弾み車が1回転する。
押しつづける。
回転が少し速くなる。
力を出しつづける。
ようやく2回転目が終わる。
同じ方向に押しつづける。
3回転、4回転、5回転、6回転。
徐々に回転速度が速くなっていく。
7回転、8回転。
さらに押しつづける。
9回転。
10回転。
勢いがついてくる。
11回転、12回転、どんどん速くなる。
20回転、30回転、50回転、100回転。
そしてどこかで突破段階に入る。
勢いが勢いを呼ぶようになり、回転がどんどん速くなる。
弾み車の重さが逆に有利になる。
1回転目より強い力で押しているわけではないのに、速さがどんどん増していく。
1,000回転、10,000回転、100,000回転になり、重量のある弾み車が飛ぶように回って、止めようがないほどの勢いになる。
ここでだれかがやってきて、「どんな一押しで、ここまで回転を速めたのか教えてくれないか」とう質問したとしよう。
この質問には答えようがない。
意味をなさない質問なのだ。
1回目の押しだろうか。
2回目の押しだろうか。
50回目の押しだろうか。
100回目の押しだろうか。
違う。
どれかひとつの押しが重要だったわけではない。
重要なのは、これまですべての押しであり、同じ方向への押しを積み重ねてきたことである。
なかには強く押したときもあったかもしれないが、そのときにどれほど強く押していても、弾み車にくわえた力の全体にくらべれば、ごくごく一部にすぎない。
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