生きかた上手
「生きかた上手」日野原重明著
Ⅴ 治す医療から癒す医療へ
まず、人間の不完全さを謙虚に自覚する
では、ミスがなぜ隠され、なぜ減らないのかと考えていくと、どうも医師も患者さんも世間の人も、「人間はパーフェクトではない」ということをすっかり忘れているからではないかと思いいたります。
考えてみてください。
どんなに最新の医療機器、医療設備を用いようが、医療も所詮「人が人にする行為」なのです。
だからこそ、そこには相手を思いやる「心」があってしかるべきですし、また反面、「絶対」や「完全」はありえない。
つまり、病気を治せないこともあるし、医療上のミスも起きるものなのです。
私たちはどんなに努力し、注意をしていても、完璧ではありません。
それは求めて詮ないこと。
むしろ謙虚に、おごらず、まずわが身を含めて、人間のいたらなさ、弱さ、不完全さを、つねに自覚することから始めなければなりません。
科学が進歩すればするほど、その自覚は一層強く求められます。
ハイテクノロジーを盲目的に信用すれば、人は油断と慢心ををまぬかれません。
ふとした不注意が思わぬ惨事を招くということを、2001年2月9日(現地時間)の、ハワイ沖での日本の水産高校の実習船えひめ丸とアメリカの原子力潜水艦との衝突・沈没事故で私たちは思い起こし震え上がったばかりです。
医療の世界で起きている問題は、実は医療にかぎらず、科学の恩恵に浴する現代社会共通の問題でもあるのです。
当然、その対応策は広く共通して語られるはずです。
そうであれば、ミスを起こした当事者を必要以上に厳しく処罰したところで、何になるでしょう。
むしろミスを隠そうとする傾向に拍車をかけるだけです。
失敗こそが、未来の安全を手にするための、貴重な財産なのです。
私たちは、この先に起こりうるすべてのミスや突発的な事故を予測することはできないのですから、おかしたミスに謙虚に学ぶよりほかありません。
実は、それが最短にして最良の道なのです。
医療ミスはゼロにはできませんが、減らすことなら私たちにできます。
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