THE SLIGHT EDGE
第1部 スライト・エッジの作用
第5章 急がは回れ
1本のすばらしい映画を見れば、逆境を乗り越える人間の魂の勝利や、正しいことを行うべきか世間の誘惑に屈してしまおうかという苦しい選択、異なる世代との感動的な出会い、心奪われるロマンスの開花、国家の誕生と苦闘などのドラマを経験することができる。
しかし、それらはすべて2時間で終わらなければならない。
2時間で生まれる国家が想像できるだろうか?
生涯の伴侶となる相手とたった2時間で出会う(デートを重ね、求愛し、恋に落ち、争い、勝利し、結婚し、その後幸せに暮らす)なんてことがあるだろうか?
もちろん、あるわけがない。
恋に落ちる、トレーニングを積んでボクサーになる、突拍子もないアイディアが100万ドルのビジネスに成長する。
これがすべて映画の中ではたった30秒だ。
それと同じようにほんのちょっと努力すれば、映画と同じようなすばらしい結末が自分にも訪れるのではないかと僕たちは期待する。
インスタント・コーヒー、インスタント・ブレックファスト、インスタント・カード審査、インスタント・ショッピング、インスタント・インフ ォメーション、そして24時間年中無休のいつでも見られるニュースにあふれた世界で、僕たちは現実とのつながりを失い、インスタントな人生を送れると危うく信じ込みそうになっている。
だが現実の人生では、リンクをクリックしてひとっ飛びというわけにはいかない。
現実の人生では、リンクをクリックしてひとつ飛びというわけにはいかない。
老子は何千年も前にこう記している。
「上普は水の如し。水は善く万物を利して争わず、衆人の悪む所に処る。故に道に幾し」(訳注:最高の善は水のようなものである。それは万物に命を与え、しかも何ものとも争わない。たいていの人が嫌うところへと流れる。それゆえ道に近い)と。
僕が好きなのは、「たいていの人が嫌うところへと流れる」というくだりだが、これは言い換えれば、たいていの人はそこまで到達しないということだ。
彼らは静かなものが持つパワーを理解しない。科学者たちが「万能溶媒」と呼ぶ水は、昔から時間のメタファーとして使われてきた。
さきほどの老子の言葉の「最高の善」を時間に置き換えてみても、やはり同じように成り立つ。「時間は水のようなものである。それは万物に命を与え、たいていの人が到達しないところへと流れる」。
同様に、スライト・エッジという言葉で置き換えることも可能だ。
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