THE SLIGHT EDGE
2部 スライト・エッジを生きる
第10章 人生の2つの道
人が飛ばない理由
人が空を飛べない理由を考えたことはあるだろうか?
人生の中で困難なことや痛みを伴うこと、悲劇的なことに直面したときに使う表現に、「そいつはヘビーだ」というものがある。
確かに人生というものは重く辛いものだ。
地球には重力という大きな力が存在し、人の身体は重力によって常に下に引っ張られている。
インディアナ州にあるハンティントン大学の創立者であるミルトン・ライト司教は、1890年の説教の中でこの自明の真理についてこんな熱弁をふるった。
「人が空を飛ぶよう神が望んだならば、神は人類に翼を与え給うたはずだ」しかし人間の中には、自明の真理を受け入れられない者もいるようだ。
例えばライト司祭の2人の息子のように。
司教がその説教を行ってから13年後、2人は世界で初めて人力による重航空機の製作と飛行に成功する。
その兄弟の名前はウィルバーとオーヴィルだ。
社会科学の研究によれば、人は5歳になるまでに(まだ小学1年生にもならないうちに)「NO」という言葉をおよそ4万回耳にするという。
では「YES」という言葉はどうかというと、およそ5000回だ。
「ノー」のほうが「イエス」の約8倍も多いのである。
つまり人を引き上げようとする力と比べると、押さえつけようとする力のほうが8倍大きいということだ。
空高く舞い上がりたいという願いに対して、8倍の重力がかかるのである。
「そんなことしちゃダメ! 猫背にならないで!熱いんだからそれには触らないの!知らない人と話しちゃダメよ。いいえ、夜更かしは許しません。いけません、もっと大きくなってからじゃないと。今は時間がないからダメ。 ノー、ノー、ノー…」
これらの「ノー」の大部分が、子供のためを思う気持ちから出ていることは確かだ。
警察のモットーのようなもので、保護と奉仕がその目的なのだ。だから「ノー」という言葉を非難するつもりはない。
けれども、「イエス」という言葉はどこにあるのか?
フォーチュン500杜をクライアントに持つコンサルタントのジェリー・ウィルソンは1994年に刊行した画期的な著書『Word-of-Marketing( 仮邦題:口コミマーケティング)』の中で、自らの革命的とも言える「別格のカスタマーサービス」戦略は、市場調査を行ったときに発見した1つの衝撃的な統計を基にしたものだと述べている。
その統計というのは、平均的な消費者は満足できたサービスや製品については3人に話すが、不満に思ったサービスや製品については33人に話すというものだ。
つまり11の否定的な体験談に対して、肯定的な体験談はわずか1つだけ。
あるアイディアがうまくいかない根拠が11あるのに対して、うまくいく根拠がたつたの1つということになる。
前にも言ったことだが、人生の夢や目標を実現できる人は20人中およそ1人しかいない。
人生、仕事、遊びのいかなる領域でも、成功率は平均にして5パーセントにも満たないのだ。
それは一体どうしてなのだろう?
前に出てきた数字がその答えだ。
5000回の「イエス」に対して4万回の「ノー」を聞かされ、3つの肯定に対して33の否定に囲まれて育てば、95パーセントの人が目的を達成できないのは不思議でも何でもないだろう。
大部分の人が空を飛ばないのも無理はない。
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