第17章 スライト・エッジを生きる P402
「選手諸君、これがフットボールだ」ヴィンス・口ンバルディ
伝説のフットボール・コーチ、ヴィンス・ロンバルディは毎年、新しいシーズンのトレーニングを開始するにあたり、この言葉を選手たちに伝えた。
ロンバルディはどんなことも当然とは思わなかったし、選手たちはみなベテラン揃いだったのだが、1人1人の選手を常に全くの新人として見ていた。
今では有名となったこの言葉をロンバルデイが初めて口にしたとき、グリーンベイ・パッカーズの名選手マックス・マギーは忘れ難い言い回しでそれに抗議した。
「コーチ、もう少しゆっくりお願いします。速すぎて俺たちにはついて行けません」。
するとロンバルディはうろたえもせず、にやりと笑ったという。
現代のビジネスの世界には、このような心の姿勢を表す1つの表現がある。
それは「先入観を持たない」というものだ。
禅僧はそれを「初心」と呼ぶ。
初心は謙虚さと端々しい探求心からなるもので、どんなに小さなことにも意味や重要性を常に見出そうとし続ける心の姿勢を指す。
初心を表現する言葉として、「諸君、これがフットボールだ」という言葉以上にふさわしいものは僕には考えつかない。
抱いている夢がどれほど大きかろうと、その実現にどれほどの飛躍が必要になろうと、それは常に小さな1歩の積み重ねによって達成されるというのが、永久に変わることのないスライト・エッジの真実だ。
それをするのは簡単だが、しないで済ませることも同じくらい簡単だ。
進むのが速す ぎないよう、立ち止まれないほど高慢にならないよう、人生をしっかりと見つめて自分に言い聞かせよう「これがフットボールだ」と。
ロンバルディにとっては、選手たちが歩む長い旅路の最初の1歩こそがフットボールだった。
フットボールはロンバルディの1セントだったのだ。
さあ、今度はあなたの番だ。
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