THE SLIGHT EDGE
第1部 スライト・エッジの作用
第6章 飛躍的進歩という言葉にだまされてはいけない
スライト・エッジは、あらゆる勝者が成功するために太古の昔から活用してきたプロセスだ。
勝つためにはいつでもスライト・エッジが必要なのである。
夏のオリンピックで最も待ち望まれる競技の1つが男子競泳だ 。
2008年の北京五輪を迎えるにあたり、マイケル・フェルプスを巡る報道が過熱していた。
というのは、マーク・スピッツが樹立した1大会で7個の金メダルという、36年間誰も破ることができなかった記録をフェルプスが破るかもしれないと期待されていたからだ。
最初の7個は割と簡単に取ることができた。
しかし8個目は、後世に語り継がれる劇的なものとなった。
100メートルバタフライの最後のターンを切ったあと、フェルプスは何センチも遅れを取っているように見えた。
ところがフェルプスが壁にタツ チした瞬間、世界はあっと驚いた。
フェルプスが100分の1秒差でミロラド・チャピッチに競り勝ったことを時計が示したりだ。
1秒どころか、1秒の1パーセントの差で。
そう、まさにスライト・エッジ(わずかな違い)だ。
だが、それこそフェルプスが8個目の金メダルを取り、オリンピック史上最高の選手という名声を手にするために必要だったものなのである。
年棒数百万ドルの契約を勝ち取る3割打者のスター選手と、平均的な給料しか貰えない打率2割6分強の選手とはどこが違うのかを知っているだろうか?
ヒットの数で言うと、シーズンを過して週に1本以下の違いしかない。
では、ヒットになるか三振に終わるかの違いはどこにあるかを知っているだろうか?
なんとバットの位置がわずか6ミリほど違うだけなのだ。
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