『Live Happy』『スライト・エッジ』習慣を身に着けよう!

ポジティブ心理学の科学から出るパワフルな情報を、待ち望んでいる人々に届けるページです。

第3章 選択 P63

イメージ 1



『選択』

その夜、青年は花を敷き詰めたベットの上でカエルたちが手足を動かし、1セント銅貨の池に浮かんでいる夢を見た。

同じ夜、もう1人の青年も眠れずに横たわっていたのだが、父がくれた本を開くことはなかった。彼は考えるのに忙しくて、眠ることも本を読むこともしなかった。

100万ドルの札束を父か差し出した瞬間、彼は心を決めていた。これから31日間で実行に移す一大計画をすでに立てつつあった。

翌朝、青年は動き出した。

100万ドルを選ぶと父に伝えた後、青年は父の銀行からお金を引き出し始めた。そして計画を実行に移す手助けをしてもらうために取締役を1人雇うと、彼らは町の中心にあるホテルのスイートルームを借りて、次の6日間に何をするかを話し合った。その週が終わるまでには、やり手の財務顧問、市場アナリスト、投資の専門家からなるチームも雇い入れた。

思いがけず転がり込んだ100万ドルを手元にさらに大きな財産を築くため、2週目は調査と意見交換、戦略の作成に明け暮れた。

3週目の初めには準備が整い、100万ドルを10億ドルに増やすべく、商業と投機という戦場へと乗り込んだ。

数日後、青年は兄が父からもらった100万ドルを何に使っているか知りたくて、兄のもとを訪れた。

だが驚いたことに、兄は100万ドルを辞退して1セントを貰ったという。

「僕ら3人が顔を合わせた日の翌日、僕が父さんにもう一度会いに行ったら、執事が財布の中をちらっと見せてくれてね。前の日は1セント硬貨が1枚入っていただけなのに、そのときは2枚に増えていたんだ。3日目にもう一度行って見せてもらうと、今度は4セントになっていた。4日目には8セントだ」兄は弟に行った。

兄がわずか数セントばかりのお金について語り続けるのを、弟は信じられない思いで聞いていた。

5日目、そのお金は16セントになり、6日目には32セント、そして週の終わりには実に64セントにまで増えていた。2週目の終わりには、もう少しで90ドル(正確にいえば81.92ドル)に達しようとしていた。

むろんそれっぽっちのお金では、弟の敏腕チームの活動拠点が置かれているホテルで、2人がまともな夕食をとるにも足りないのだけれども。3週目に入って数日すると、財布の中身は655.35ドルとなり、兄が1週間どうにか暮らしていける額まで増えた。

「馬鹿なことを!」と弟は叫んだ。

「1セントを選んだなんて信じられない!今からでも遅くはないから、父さんのところへ行って100万ドルに変更してもらえないか頼んでみるといい。たとえその半分の50万ドルしか貰えなかったとしても、いまみたいにかつかつの暮らしをするよりは間違いなくましじゃないか。さもなければ、せめて僕に援助させてくれ。1週間辛うじて食べていけるだけのお金しか持たずに君が代の中に出ていくことを考えると、僕は耐えられないよ」

だが兄はこの話に耳を貸そうとしなかった。

その夜、父は眠っているうちに穏やかに息を引き取った。

その月の終わり近くに、弟の雇い人である取締役が気がかりなニュースを伝えに来た。

史上が弱含みに推移しているので、これまでの楽観的な予測は下方修正する必要があるだろうという報告だった。弟は取締役に礼を言って、落ち着かない気持ちで次の報告を待った。

31日目の朝、つまり兄弟が執事のところへ行って財布を受け取ることになっている日の朝、取締役が最後の報告を持ってきた。

足を引きずるように歩き、しばらくの間咳払いをし、水を1杯所望した後、ようやく取締役は良い知らせと悪い知らせの両方があるという言葉で報告を始めた。

相当うまくいった投資もあれば失敗した投資もあるが、全体としてはそこそこの利益が出て、100万ドルの元手は1.5倍の150万ドル近くになったという。それがよい知らせだった。

「それで悪い知らせというのは?」弟は固唾をのんで答えを待った。

「それが」と取締役が続けた。「支出のほうなんですが、スタッフチームに支払う手数料、税金、仲介業者への謝礼、銀行から借りたお金の利子、ホテルのスイートルームの部屋代...」ここまで話したところで取締役は再び咳払いをし、水を一口飲んで続けた。「それに当然、私の1か月分の給料も頂かなければなりませんので、全部で175万ドルちょっとになります」

それでは25万ドルの赤字ではないか!金持ちじゃないどころか、大きな借金ができてしまったことになる。身の破滅だ。

慌てふためいた弟は、兄に会うために町の向こう側へと急いだ。そして最初に兄に会いに行ったときよりも、いっそう大きなショックを受けることになった。

28日目、1セントで始まった兄の財布の中身は100万ドルを超え、29日目には250万ドルを超えた。30日目にあたる昨日には500万ドル
を超えて、執事から財布を受け取った今日には1073万7418ドル4セントに達していた。

1セントを選んだ青年が発見したのは、複利というものが生む桁外れの創造力だった。

複利のことを「世界で8万目の不思議」と呼ぶ人もいるほどだ。それはまさに池の水面を一面のホテイアオイが覆い尽した力や、手足を動かして生クリームをバターに変えたカエルの力と同じである。

100万ドルを選んだ青年は無一文となり、大きな借金を負った。

1セントを選んだ少年は1000万ドル以上を手にした。

#SlightEdge #幸せの秘訣 #ありきたりな事をきちんとやる #コミュニティー