第6章 飛躍的進歩という言葉にだまされてはいけない P143
『小さな一歩』
僕はなにも、飛躍的進歩なんて実際には起こらない、だから神話だなどと言っているわけではない。
事実、それは実際に起こる。
ただし、人々が考えているようなかたちでは起こらない。クオンタム・リープという言葉は素粒子物理学に由来していて、その実際の意味は、原子より小さい粒子がより高いレベルのエネルギーへと突然ジャンプするときに起こる現象というものだ。
しかしそれは、その粒子に対して長期間加えられたエネルギ
ーがもたらすポテンシャルが、徐々に積み重なった結果として起こる。
言い換えれば、それは「突然起こる」のではない。
現実の飛躍的進歩は、スライト・エッジ的努力を長い間積み重ねた結果、最後に起こるものなのだ。
それは、ホテイアオイが29日目から30日目にかけて突如として大増殖したように見えたのと全く同じことだ。
また、溺れて死にかけていたカエルが、「突然」出現したバターに命を救われたのと全く同じことだ。
現実の飛躍的進歩は、スーパーマンが高層ビルを飛び越えるのとはわけがちがう。
本当の飛躍的進歩は、忍耐強く1000回もの実験を重ねた末に電球を完成させ、それによって世界を変えたエジソンが行ったことだ。
