第8章 波及効果 P193
『レニーの話』
私が初めてスライト・エッジを経験したのは、私の母が周囲のみんなと関わり合うのを見ていた子供時代のことです。
母は日々、友だちにも見知らぬ人にも同じように変化をもたらしていました。当時はそれが何なのか分からなかったのですが、スライト・エッジが作用している姿だったのです。
私は母の社交的な性格を受け継ぎはしませんでしたが、人々を思いやる心は受け継いだと思います。
私はそのときたまたま一緒になった人たちに寄り添うことを習慣にしてきました。
その人たちの世界で起きていることに関心を持ち、質問をし、そしてこれが一番大事なのですが、その人が頑張ったことを褒め、自分が気づいた正しいこと、間違っていることに関してコメントをするのです。
見知らぬ人、店員、レストランの接客係、そして日々の活動の中で偶然出会う人に対してもそうします。スーパーマーケットのレジでとなりになった人にも親切な言葉をかけ、微笑みかけるのです。
すると彼らは心の中にあることことを私に打ち明け、私生活についてもすべて話すのです。
たとえほんの一瞬でも、私が彼らに感心を持ったというそれだけの理由で。
私がこの人たちに会うことは二度とないかもしれないし、こういったちょっとした出会いが彼らにどんな影響を及ぼすかは知る由もないのが普通です。
けれどそれは意味があることなのだと、私は知っています。
実のところ人がある時点で何を必要としているのかを知ることは決してできません。しかし微笑み、相手を思いやる身ぶり、相手の人生についての誠実な質問、あるいはただ相手の話に耳を傾ける人間が、その人がその瞬間にまさに必要とするものであることもとても多いのです。
そしてそんなことは、やらずに済ましてしまうこともとても簡単です。
●自分の思考に没頭してわずかな努力をせず、自分の周囲で起こっていることに積極的に関心を持たないでいることも。けれども、もしそれをするなら
●目の前を通り過ぎていくすべての人々のために前向きな時間を作ってあげるというちょっとした習慣を養うならば
それはやがてこの世界であまりにしばしば出会う後ろ向きな態度と無関心さに変化をもたらすことができると私は信じています。