第３章 選択 Ｐ75
『父親の贈り物』
「お前たちに贈り物をしよう」ある裕福な父親が息子たちにそう言ったとき、贈り物というのはお金のことだと一方の息子は考えた。
もう一方の息子は、父の話により深く耳を傾けた。そして贈り物というのはお金ではなく、知恵のことだと理解した。
年老いた父親は、息子たちに単なる財産を残そうとはしなかった。なぜなら知恵がなければ、財産などじきに使い果たしてしまうだろうということが父には分かっていたからだ。
だからお金ではなく、自分の哲学を伝えようとしたのである。
父の贈り物にはある教訓が込められていた。それはお金についての教訓ではあったけれど、本当は、てこの作用、成長、等比数列についての教訓だったと言える。
言いかえれば、今日あなたが取ったちょっとした行動が時間が経ったときにどんな影響を及ぼすのかが分かると、その行動が全く違ったものに見えてくるという教訓であり、ホテイアオイのように一見何の力もないように見えるもの、1セントのように取るに足りないように思われるものにも、とてつもない潜在力が秘められているという教訓だ。
つまり、1つ1つの小さな積み重ねこそが違いを生むことを理解し、忍耐強く取り組むことの大切さである。
あなたが毎日欠かさずしている事、感動的でも何でもないように見える事、重要性があるようにすら見えない事が本当は重要なのである。
こうした事が生むのは1つや2つの違いではない。
あらゆる違いはそこから生まれるのだ。
信念を持って、ちょっとした前向きな行動を長い間続けることが重要なのである。
時を逃すことなく倦まずたゆまず続ければ、奇跡は必ず起きると信じなければならない。
それがスライト・エッジの教訓であり、スライト・エッジによってあなたの人生は変えることができる。
裕福な父親が息子たちに選択を迫ったのと同じように、人は誰でも人生のあらゆる瞬間に選択を迫られている。
豊かな友人の輪を広げていくのか、それとも孤独を深め孤立していくのか。
溢れるばかりの力強い活力を維持するのか、それともずるずると不健康になっていくのか。
成功するのか、失敗するのか。
幸せになるのか、惨めになるのか。
達成感で満たされるのか、絶望を味わうのか。
億万長者になるのか、それとも海辺の遊び人で終わるのか。
あなたは日々、毎時間、その選択を繰り返しており、それは池一面を厚く覆い尽したホテイアオイのように、あなたの人生の隅々にまで、良くも悪くも影響を及ぼすことになるだろう。
本書は、あなたを裕福な男からの贈り物へと導くガイドブックだ。
本書を読んで、賢明な選択ができるようになるための思考や行動を習慣づけてほしい。
安易に手に入る100万ドルに惑わされることなく、着実に倍増していく1セントのほうを常に選べるようになってほしい。
生クリームがバターに変わるまで、かき混ぜ続けられるようになってほしい。
人生に植えたいどんなホテイアオイでも、自分で選ぶ力を身につけてほしい。
そして、お金であれ、笑顔や励ましの言葉であれ、友情や人間関係であれ、仕事のキャリアや業績であれ、あなたの選んだホテイアオイの花で、人生という池のいたるところを覆い尽していただきたいと思う。
