第12章 自分に投資しよう P291
「心のジャイロスコープ」
今話したようにロケットは絶えず針路を調整し、軌道を外れる度に元の軌道に戻ることができる。
これはロケットが備えているコンピューター化された誘導システムのおかげで、その装置の心臓部とも言えるのが姿勢制御装置だ。
子供の頃、このジャイロスコープの効果を応用したこまのおもちゃで遊んだことがあるかもしれない。
ひもを巻き上げて回転させると、どんなふうに持とうが 何をしようが、こまは回転している限り直立したままだ。
こまの生み出す力は非常に強力なので、 こまは指先に乗せた状態でバランスを保ったり、直立した状態で紐の上を前進したりできる。
アポ ロ宇宙船の誘導システムの心臓部にあるジャイロスコープも、本質的には同じものだ。
基盤に搭載 された回転する物体が、基盤自体の移動方向に関係なく元の方角を保ち続けるという仕組みである。
ロケットがA地点(現在地)を出発し、B地点(月)へと向かう。
最初の数キロを飛行中、ロケットはわずかに軌道を外れる。
するとジャイロスコープが数値をはじき出し、計器類にはロケットの実際の針路が若干ずれていることが表示される。
そしてジャイロスコープは常に正しい方向を、つまり船が実際に進みたい方向を指し示す。
コンピュータのプロセッサーはロケットの軌道のずれを探知し、修正するようロケットに伝える。
プロセッサーとロケットが人間の言葉を話すとしたら、彼らの会話はこんな感じになるかもしれない。
プロ セッサー:「ロケット 、君は1.27度の方向で北に向かっている。1.29度に戻してくれ」
ロケット :「了解...軌道修正完了」
プロセッサー.「 よし。おっと、やりすぎだ。1.30度になっているぞ。あと0.01度南を向いてくれ」
ロケット:「分かった。そうしよう」
プロセッサー:「頼むぞ。いや、ちょっと待て。 西に寄りすぎだぞ。0.067度の修正が必要だ」
ロケット:「了解、すぐにやるよ」
プロセッサー :「うわっ!やりすぎだよ。0.012度戻してくれないか」
ロケット:「了解、0・012度だな。これでどうだ?」
プロセッサー:「またちょっと北に寄りすぎだ。ゆっくり1.27度に戻してくれよ」
ロケットはこんなふうに地球から月に着くまでのあいだ、絶えず修正を繰り返すことによって、圧倒的大部分を占める失敗の連続を最終的な成功へと変えるのである。
あなたにもジャイロスコープが備わっていて、あなたがその気になればロケットのジヤイロスコープとほぼ同じような作用をする。
あなたに備わったジャイロスコープ。
それは将来のビジョン、つまり自分の夢である。
そしてスライト ・エッジが、あなたのプロセッサーだ。
一見取るに足らないちょっとした行動を(するのも、しないで済ますのも簡単なことを)着実に積み重ねることによって、あなたは虚しく宇宙空間をさまようことなく月に直行することができるのだ。
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