第14章 スライト・エッジ同盟を活用しよう P327
「「推進力」を利用する」
競走に勝ったのはウサギだろうか、それともカメだろうか?
その答えは誰でも知っている。
それなのに今の世の中では、あれもこれもすぐにできると考えている人がほとんどだ。
求める成果が短期間で得られなければ、さっさとやめてしまうのである。
手っ取り早く稼ぐ。
高速車線を走る。ワンクリックで注文する。
電子レンジの前に立って「早く、早く」とつぶやく人。
短期間で成果が得られることを誰もが期待し、求めるようになっている。
だが、速さばかりを求めるのは、最終的にはあなたをスライト・エッジの下降曲線へと引きずり下ろし、不幸な人生ヘと導く戦略なのである。
第5章に「急ぐならゆっくり進め」というタイトルをつけたのには理由がある。
イソップ物語が伝えようとしているメッセージは、完全に正しい。
速いことが最善とは限らないし、速くても競争に勝てない場合も多い。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の ピーター・センゲ教授が自著『最強組織の法則 新時代のチームワークとは何か』(徳間書店)の中でこのことに関して次のように記している。
生態系から動物、そして諸々の組織に至るまで、事実上すべての自然のシステムには、最適な成長速度というものが本来存在している 。
この最適な成長速度は、「可能な限り最速の成長速度」に比べるとはるかに遅い。
しかし、成長速度があまりに速くなりすぎると(がんの場合にはそうなるのだが)そのシステム自体が速度を緩めることで埋め合わせをしようとする。だがその場合には、その過程で組織の生存を危険にさらすことになるかもしれない。
成長が速すぎると自分のためにはならないという実例は、枚挙に暇がない。
あまりに急成長しすぎて自滅することになった会社。
日の出の勢いでのし上がったあと、墜落して燃え尽きたロックスターや映画スター、スポーツのスター選手、政界のスター。
2001~2006年頃に急上昇した住宅価絡が2007年から下落を始め、はじけてしまったアメリカの住宅バブル。
進歩や成長が速すぎると、往々にしてシステムの(あるいは人間の)生存が脅かされることになる。
速度を上げることは、速度を落とすことへと容易に転じてしまうのである。
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