THE SLIGHT EDGE
第1部 スライト・エッジの作用
第5章 急がは回れ
第3章で出てきた裕福な男が自分の息子たちに与えたのと同じ選択肢をあなたも与えられたとしよう。
あなたは100万ドルと1セントのどちらを選ぶだろう?
たいていの人は2番目の息子と同じように、今すぐに手に入るお金を選ぶだろう。
あなたは違うだろうか?
何しろ100万ドルだ。
しかも現金で今すぐ手に入るのである。
もちろんそれは間違った選択で、世界中の何百万人もの人々が毎日毎時毎分引っかかっているように、あなたもその短い魅惑的な言葉にまんまと引っかかってしまったことになる。
今すぐという言葉に。
かつて僕は、1人の男性が電子レンジの前に立ち、もう我慢できないというふうに「早く…早く...」とつぶやきながら、ランチが温められているのをその小さな窓からのぞき込んでいるのを目にしたことがある。
僕はとても驚いた。
たった60秒が待てないのかと。
僕たちは今、あらゆるものをこの瞬間に手に入れたがるプッシュボタン式の、すぐにアクセス可可能な、ファストフード的世界に暮らしていているとよく言われる。
それは僕らが祖父母の世代よりせっかちになっているからではない 。
祖父母の世代とは全く違う考え方、すなわち違う哲学を
文化として採用したからだ。
人生には自然な進展がある。
種をまき、育て、そして収穫する。
農耕社会だった頃には、誰もがそれを知っていた。
誰も考える必要のない、自明なことだった。
それが物の道理というものだった。
種をまき、育でなければ、収穫はできないということが。
しかし、状況が変わってしまった。
今では学ばなければそれが分からなくなっている。
今の世の中では誰もが種まきから収穫へと一気に進みたがる。
フィットネスクラブに入会して種をまいたはいいが、2、3日経っても目に見える効果という収穫が得られないとイライラし始める。
フィットネスクラブに入った。
何時間も頑張った(全部で3、4時間だけれども)。
それならもっと筋骨隆々としてきでいいんじゃないのか?
だが、これは宝くじの論理である。
ひと稼ぎするために、どうしてスキルや人間関係や経験を築かなきゃならないのか?
くじを買うだけで手に入れることはできないのか、というわけだ。
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