第9章 始まりは1セントから P211
『1パーセントの力』
「なるほど、1セントが日々2倍になっていくというのは何とも結構な話だ。しかし現実の人生には、私のお金を毎日倍にしてあげようなどという人はいない」。あなたはそんなふうに思っているかもしれない。
それはそのとおりだ。では方程式を変えることにしよう。
2倍になるというのはしばし忘れ、複利で増えていくというのも忘れることにしよう。その代わりに、毎日1セントずつ足していくというのを考えてみよう。
魔法のように2倍に増えるのも、、複利もなしだ。ただ、1日1セントを足していくという単純な行動を何度も何度も繰り返すだけだ。
また、1日1セントずつ足していくのと並行して、自分にとって大切な人生すべての領域において、それと同じくらい単純なことを毎日何か1つすることを想像してみよう。
つまり、自分の幸せ、自意識、友人関係、健康、勉強、自分が追及しているスキルや関心のある分野の知識などに、1セントに相当する何かを足していくのだ。
大切だと思うあらゆる領域で、毎日1セント足すのである。
1セント分の幸せや知識をどうやって足すのかって？答えはこうだ。
「セント」という言葉は、ラテン語で１００を意味するケントゥムという言葉に由来し、転じて1ドルの100分の1にあたる1セントを意味するようになった。1セントと呼ばれているのは、それが1ドルの100分の1、つまり1パーセントだからだ。
せは人生のすべての領域で、自分が達成したい価値の1パーセントを足していくとしよう。
毎日1パーセントずつ足していくことによって（ただ足していくだけで、複利はつかないものとする）1年が過ぎる頃にはどれだけ増えているのだろう？
全部で365パーセントだ。
言いかえると、3.5倍に増えるのだ。
自分の小さな行動（幸せ習慣、親切な言葉、練習や研究の時間、トレーニング、読書の時間その他）の1つ1つがその領域における1パーセントの改善に相当するとすれば、1年後の自分の達成度は2倍ではなく3倍以上になっているはずだ。
自分自身を（自分の健康、幸せ、知識、スキル、食習慣、人間関係など、自分が注目したい人生のどんな領域においても）日々1パーセントずつ向上させることができるものだろうか？
そこにはあまりにもわずかな違いしか存在しないから、一体どうやって測ればいいのかすら分からないかもしれない。
だが明日も、その翌日も、そして1年間ずっと毎日欠かさず続けたならどうだろう？
実際にそうした場合に、どのように見えるかをお話ししよう。
1日目は0.01倍だけ向上する。あまりにもわずかすぎて、おそらく気づくのは不可能だろう。
2日目は0.02倍になっている。3日目は0.03倍だ。まだごくわずかで、ほとんど目には見えない。
繰り返しになるが、人々がジム通いをやめたり、宿題をさぼったり、お礼状を書かずに済ませてしまうのはそれが理由だ。
0.03倍だけ痩せたとか、0.03倍だけ健康になったとか感じたところで何になるんだろう？
わざわざ努力する意味があるのだろうか？
けれどもそれをやめずに続ければ、毎日1セントずつ足していけば、1年後には3倍以上幸せで、3倍以上の知識が身につき、3倍以上に上達し、元の自分の3倍以上の自分になっているはずなのだ。
どうやってこんなことを成し遂げるのだろう？2倍3倍の努力によってだろうか？
そうではない。
実際、もう努力はしているのだ。誰もみな、努力はしている。努力が足りないとかいうような問題ではない。
けれども、もしかしたら、あとちょっとだけ、ほんの1パーセントだけ努力するといいのかもしれない。
