『Live Happy』『スライト・エッジ』習慣を身に着けよう!

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第9章 始まりは1セントから P206

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『すべてはどこからか始まる』
ティーヴという名前の金欠英語教師が、空き時間に男性向けの小説を書いて生計を立てようと悪戦苦闘していた。
問題を抱えた女子高生を主人公にした小説を書き始めたものの、最初の3ページを書いたところでこの話はだめだと気づき、ゴミ箱に投げ捨てた。
もう何度となく不採用通知を受け取ってきたのに、性懲りもなくまた投稿してどうするんだと思ったからだ。
翌日、部屋を片づけていたスティーヴの妻がゴミ箱を空にしようと身をかがめると、ぐちゃっと丸めた小さな紙束が目に入った。
彼女はそれを伸ばして広げ、タバコの灰をはらって読んだあと、スティーヴの机の上に戻した。
「これは今までのものとは違うと思うの。完成させる価値があるんじゃないかしら」。妻はスティーヴにそう言った。
妻の言うとおりだった。
ティーヴがその小説を完成させると、ペーパーバック版の著作権には50万ドル近い値がついた。それだけではなかった。
彼の作家としてのキャリアは、キャリーという名前の問題を抱えた女子高生を描いたこの小説で始まったのだ。
ゴミ箱から拾い出された小説にあと押しされて、スティーヴン・キングは20世紀で最も成功した作家の1人になったのである。
タビサ・キングがゴミ箱に中に見つけたものは色あせた1セントだったかもしれないが、それでも1セントは1セントだった。
さらに20年さかのぼって1955年12月のある寒い日、アラバマ州モンゴメリーに住む42歳の無名のお針子女性が、もうたくさんだと腹を決めた。
長い一日の仕事を終えたあとで、彼女は疲れ果てていた。何より、自分がそれまで受けてきた扱いに、そして同じ肌の色をした人たちの誰もが、やはりそんな扱いを受けていることにうんざりしていた。だからバスの座席を白人の乗客に譲るよう運転手に言われたとき、言うとおりにしないと警察に通報すると脅されても、それを拒んだ。
それは口先だけの脅しではなかった。
彼女は実際に逮捕され有罪判決を受けて、市の条例に違反した罪で罰金を科された。
この事件を契機として、新たな公民権運動の団体が結成された。
彼女の公判が行なわれたのと同じ日、設立されたばかりのモンゴメリー改善協会はマーティン・ルーサー・キング・ジュニアという名前のあまり知られていない若い牧師を広報担当者に選び、その後10年にわたり法的人種差別を廃止し、アメリカという国の顔を根本から変えることになる運動に乗り出した。
ローザ・パークス(訳注:バスの座席を白人に譲るのを拒んだお針子の黒人女性)は1セントだったのだ。