生きかた上手
「生きかた上手」日野原重明著
Ⅳ いきいきと生きる
ほのぼのとした善意だけでは、ボランティアはつとまりません。
ボランティアは、提供する技術においてプロでなければならない
聖路加国際病院における病院ボランティアの無償の働きによって、病院が直接、間接に財政的に助けられている部分はたしかにあります。
それをねらって病院ボランティアを募集し始めたわけではありません。
有能なボランティアがここで育ち、ここで活躍し、ここから巣立っていただけたらいい。
いわばボランティアの本領が発揮される場所を提供したいと考えたからでもあります。
ボランティアに要求されるものが、いつもそのときどきに足りない人手を補うような雑用ばかりであったなら、ボランティアをやってこそ味わえる喜びはなかなか実感できません。
これではボランティアのすそ野は広がらないのも無理のなおことです。
ボランティアを募集する側にも、十分なボランティア精神の理解が必要であり、ボランティアを労働力として使うのではなく、ボランティアを育てていこう、というくらいの意識が望まれます。
たとえば病院ボランティアは、患者さんからすれば、医学においては同じ素人だという心安さが感じられる存在であり、医師を前にしたときよりもずっと気持ちがリラックスします。
患者さんに与える印象はそのほうが望ましいでしょうが、病院ボランティアが提供する技術においては、アマチュアであってはならない、プロをも目指すべきだと私は思っています。
ですから、技術を磨くための勉強をボランティアには求めます。
熱い思いやほのぼのとした善意だけでは、残念ながらボランティアはつとまりません。
相手の心を察する感性、状況を読み取る洞察力、そして果敢な行動力が求められます。
そのめいめいの意識と努力をバックアップできるように、たとえば技術を磨く勉強の機会はできるかぎり用意したいと、私はこれまでも務めてきました。
私が道をひらいた血圧測定ボランティアのご婦人たちも、その腕と知識においてはプロ顔負けです。
毎年、血圧測定ボランティアの方々は聖路加看護大学の学生たちに、そばで見守る教授も驚くほど、わかりやすく要領よく講義をされています。
血圧の測りかたを一般の人に教えるために、全国各地を回られることもあります。
他人に教えるたびに、教えかたにますます磨きをかけていく姿は頼もしいかぎりです。
ボランティアを尊重して起用すれば、ボランティアは、その技術においても、人間としても驚くほど成長します。
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