生きかた上手
Ⅵ 死は終わりではない
人には人にふさわしい終末が約束されるべきです。
患者さんを苦しませてはならない
いよいよ最期という患者さんに耐えがたい苦痛があれば、私はモルヒネを十分に使って患者さんの痛みを取り除きます。
死への不安が大きくて夜眠れないという人には睡眠薬を処方して、よく眠れるようにします。
そうすることが、患者さんが人間らしい終末を迎えるためにはどうしても必要だと私は思うからです。
人間らしい死とはどのようなものを言うのでしょうか。
それは、死の手前まで愛を感じられる感性が保たれていて、花を美しいと思って見つめ、そのかおりを楽しめて、ほとんど食べられないとしても、ぶどうの果汁をちょっと口に含めば「ああ、おいしい」と味わいが起こる。
そうしてさらに、自分のいのちが間もなく終わるその別れのときに、愛する人たちにどんなことばを残していくかを考える知性が保たれている。
そのようなものだと思います。
そこには、痛みや苦しみはあってはなりません。
耐えがたい痛みは、患者さんの存在をまるごと呑み込んでしまい、患者さんから人間的な知性や感性を奪ってしまいます。
がんの末期にあらわれる激しい痛みも、モルヒネを使えば楽になります。
モルヒネはこわい薬だという誤解がいまだに医師のあいだにさえあるのは憂うべきですが、モルヒネは上手にコントロールしながら使えば、患者さんがただ痛みから解放されるばかりではなく、患者さんに知性や感性を取り戻してくれます。
痛みがなくなれば、人は死への恐れからも解放されます。
この耐えがたい苦痛が極まったところに死があるのだろうと患者さんは想像していますから、、痛みが激しさを増すほどに、死に近づいているという恐怖感は募ります。
ところが、死を連想させる激しい痛みからまったく解放されてみると、患者さんは自分が「死に向かっている」というよりも、「いまを生きている」という実感を味わえるようになります。
生のぎりぎりまで「生きる」希望が湧いてくるのです。
苦しまずにすむ痛みなら、苦しまないほうがいい。
それは、間もなく死を迎える自分のためだけではなく、残される家族のためにも、そうするのが望ましいと私は思います。
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