生きかた上手
『伝え方が9割』
第2章 「ノー」を「イエス」に変える技術
「イエス」に変える切り口:6
「チームワーク化」
こちらは、ステップ2で相手が「面倒くさい」「やる必要がそこまで見つからない」と思っているときに効果を発揮します。
お願いを相手任せにするのではなく、「いっしょにやりましょう」とあなたと相手をチームワーク化するのです。
人はひとりだったらしないことをするようになります。
人はもともとコミュニティを大切にし、集団行動する動物です。
誰かがやるなら自分もやりたくなるのです。
ひとりだと化粧室に行きたくなくても、「いっしょに化粧室に行こう」と言われると、動くのが人です。
ひとりだと赤信号を渡りたくなくても、「いっしょに渡りましょう」と言われると、人は動くのです。
例えば、勉強嫌いの子どもに勉強させるとき、どう言ったらいいでしょう?
「勉強しなさい」→あなたのメリットでしかない。
「いっしょに勉強しよう」→面倒なことであっても、人といっしょであれば動くもの。
子どもを持つすべてのお父さんお母さんに耳寄りな方法です。
「勉強しなさい」と言っても、子どもは勉強しないですよね。
子どもは素直です。
やりたくないことは、やらない。
それで頭を悩ませているご両親も多いことでしょう。
それなら、やりたいと思わせるよう伝えればいいのです。
子どもが勉強をしてしまう、魔法のコトバがあります。
「いっしょに勉強しよう」です。
これは「チームワーク化」を使ったお願いのしかたです。
それまで勉強しなさいと言っても、そうは勉強をしなかった子ども。
自分の部屋に行ったとしても、マンガを読んでいるかもしれません。
実際、私の友人も子どもが勉強しなくて困っていました。
「勉強しなさい」と言っても、いっこうに改善する気配がなかったのです。
それが、「いっしょに勉強しよう」と言い、居間で子どもが勉強している間、自分は好きな本を読むようにしたら、子どもが隣で黙々と勉強をするようになりました。
人は本能的に、誰かといっしょに何かをやりたいのです。
それは太古の時代から人間が生き延びてきた知恵です。
誰かが狩りをするときは、協力していっしょに行い、木の実を集めるときも、外敵に襲われないよういっしょに行った。
その記憶が私たちの奥底にあるのです。
ただ、これは自分も動くことが前提です。
動くといっても、子どもといっしょに同じ机で真剣に何か好きなことをすればいいのです。
これは、もう一歩進んだ例です。
本田直之さんの講演に参加したときに、その心の掴み方に衝撃をうけました。
どの講演であっても、聴衆は意欲的な人とそうでもない人がいるもの。
特に後ろのほうに座っていて、なんとなく参加した人たちは眠っていたりもします。
講演がはじまったとき、本田さんはいきなり矢継ぎ早に質問をはじめました。
「この中で、自分が面倒くさがりやと思う人?」
「この中で、満員電車に乗るのがキライな人?」
「この中で、決まった机でずっと仕事するのがキライな人?」
これらの質問に、そこにいる会場ほぼすべての人たちがざわめきながら手をあげました。
それらの質問は、ほぼ全員が手をあげたくなるような質問でした。
そして本田さんも言いました。
「私もいっしょです」
各分野で成功しているあの本田さんが、自分たちといっしょの考えということに、その会場は軽い興奮状態になりました。
もちろんそこからの本田さんの講演内容が素晴らしかったこともあります。
ですが、はじめに受講者と本田さんはいっしょだということを伝えたことで、ただの一歩的な講演ではなく、聴衆と本田さんがその場を、その講義をいっしょにつくっている状況となったのです。
講演は、大盛況のまま、あっという間の90分が終了しました。
私の体感でいうと20分ほどで終わってしまったかのよな時間の流れでした。
もし、ただ「みなさん、私の話をきいてください」というカタチで講義をしていたらきっと寝る人も出てきたでしょう。
ですが、本田さんの「みなさん、私といっしょに授業をつくりましょう」という暗黙のメッセージがあったことで全員の心が動いたのでした。