生きかた上手
「生きかた上手」日野原重明著
Ⅰ.何事もとらえかた次第
死に近い人にこそ、生きる希望が必要
だからこそ、死が近い人たち、絶望の淵にある人たちに希望を与えることはできないものかと、私はホスピスでの回診にことのほか心を砕きます。
8年前、神奈川県平塚市郊外に建てたホスピスを、私はときどき訪れます。
ここでは日本中のどこよりも早く季節が巡ります。
建物のいたるところを飾る京都の百景の絵が、つねにひとシーズン先のものだからです。
春には早くもまばゆい新緑が、夏には紅葉する山々が、秋には白銀の木立が、そして冬には満開の桜が壁一面に広がります。
病気の進行から見れば、たとえば患者さんが秋の紅葉を見るのは無理かもしれない。
けれども、患者さんの心のなかにはいままでに過ごしたさまざまな秋があります。
紅葉の絵を見て、患者さんに「あの秋をもう一度」と待ち望む気持ちが湧いたなら、その気持ちが今日一日を生きようという希望につながるかもしれません。
人は最後の瞬間まで、生きる希望に支えられるべきなのです。
ところで希望を与え上手な人もいるのです。
深刻ながんで聖路加国際病院に母親の病室を、ふだんはもったいないような大きなバックをかかえて娘さんが見舞いに来ました。
婦長さんはその様子を見るやピンと来たようですが、とめもせず、気づかないふりをしました。
バックの中身は、持ち込み禁止の”犬”だったのです。
入院以来、可愛がっていたペットにふれることもできない母親に、せめてひと晩だけでもペットを抱かせてあげたいと、娘さんは思いついたわけです。
無論、犬が吠えればそれまで、決死の覚悟のみまいだったことでしょう。
しかし、そんな娘をもったことを、母親はどんなにうれしく思ったことでしょう。
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