生きかた上手
「生きかた上手」日野原重明著
家族とは、「ある」ものではかくて、手をかけて「育む」ものです。
まず自分を好きになるように
心通うコミュニケーションのためのマニュアルなどありませんが、一つアドバイスするなら、「自分のことを好きになりなさい」と申し上げたいと思います。
自分をこれ以上甘やかすのではなく、自分をとことん見つめるのです。
自分という全存在を愛するのです。
自分を愛せない人間は、決して他人を愛することなどできません。
誰しも長年のあいだ、世間や社会を鏡に見立てて、その鏡のなかに自分の姿を見てきたはずです。
社会に向かって見せている「外の自分」には、見栄もあり、無理も背伸びもしています。
そろそろ子育てにひと息つくところ、人は徐々に自分をてらうことから解放されます。
目を「内なる自分」に向ける好機を迎えるというわけです。
鏡を通してではなく、自分の目で、自分を見つめる。
嫌いな面も含めて、ひとまず一切を受け入れる。
その内なる自分のなかに、いまだ芽を出していない、よい種を見つけ、慈しみ育むことです。
そうした未知なる可能性をもって生まれた自分を、大切なものと信じることです。
その思いにいたれば、同じくかけがえのない存在である他人の心に寄り添う素地ができるはずです。
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