生きかた上手
「生きかた上手」日野原重明著
Ⅴ 治す医療から癒す医療へ
医師は聞き上手に、患者は話上手になろう
では、あなたは医師にどのようにからだの情報を伝えるべきでしょうか。
「どうもいつもとちがう」というあなたの五感がとらえたからだの変調は、どんなに精密な検査より、はるかに病気の感度においては優れています。
言うまでもなく、具体的に客観的に伝える必要があります。
「どうも変なんです」では漠然していて何も伝わりません。
「いつからこんな具合か」と問われたら、「随分前です」ではなく、「過去3か月ごとに3回ありました」とか「10年前に同じことがありました」と答えます。
痩せたのであれば「食欲がなくひと月前に5キロ痩せました」と言う。
毎日血圧を測っているのなら、その数値を伝えるといいでしょう。
そして、伝えるべき情報は事前に整理しておくことが肝心です。
いざ医師に問われて答えようとしても、自分のからだの感覚をことばに置き換えるのは想像するより難しいもので、少し考える時間を必要とします。
あなたが家を出る前に、そのまま医師に手渡せるくらいのわかりやすいメモを用意しておけば申し分ありません。
過去の手術歴や「いついつから生理不順」といった、ついでながら医師に知っておいてほしいことなども書き加えておくとよいでしょう。
医師に対してさしでがましいかな、などと遠慮することはありません。
よい医師 なら、あなたが上手にまとめたメモを見て、「こんなこともあったの。じゃあ、このときはどうだった?」とさらに突っ込んだ質問をするでしょう。
「このメモをカルテに貼ってもいいかな」と言う医師もあるかもしれません。
あなたの働きかけに対して医師がどのような反応を示すかもわかり、あなたにとってよい医師かどうかを見分ける手だてにもなってくれるはずです。
さらに、伝えるべき情報には優先順位をつけておくことです。
手短に言う場合はこれ、少し余裕をもって話せるときはこれ、という具合に、伝える事柄を何段階か用意しておきます。
あなたの問題リストをつくるのです。
「今日はこのことが一番心配できました。ですが、第二、第三番めに気になっていることもあるので次の機会に診てください」とあなたが言えば、忙しい医師はどんなにか助かるでしょう。
それでも医師に十分に伝えきれなかった思いが残る場合には、看護婦さんを介して伝えることをお勧めします。
そして、病院での待ち時間をまとめの時間と心得て、上手な自己表現のために最終チェックをしてください。
診察室での医師と患者の会話は、短い時間ながらも、息の合ったキャッチボールのように交わされるのが理想です。
患者さんが用意したボールを受けて、医師は患者さん一人では思い出せなかった事柄を引き出すようなボールを返す。
その問いに触発されて患者さんはまた新たな情報を提供できるのです。
患者さんのからだにまつわるストーリーの、医師は聞き上手であること、患者は話し上手であることに、私たちはもっと努めなければなりません。
ちなみに、医療において最先端を行くアメリカや英国、ドイツでは、データ本位の医療を反省して、診察室での医師と患者の対話、いわゆる物語り医学、nar,rative medicineがいま最も注目され重視されつつあることを付け加えておきます。
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